沖縄初の膵・腎同時移植を医学科生が見学しました
このたび琉大病院で行われた沖縄初の膵・腎同時移植を、琉大医学部医学科生が夏休みにもかかわらず見学しました。以下は感想です。
HYくん
今回、脳死ドナーからの膵腎同時移植手術を見学させていただく貴重な機会をいただきました。今回の移植により、患者さんが長年苦しんできた透析やインスリン注射から解放される一方で、出血や血管吻合不全、臓器虚血、拒絶反応など大きなリスクも伴い、手術室には強い緊張感と責任の重さが漂っていると感じました。臓器が手術室に到着してから、血管吻合、そして臓器の再灌流に至るまでの一連の工程を間近で拝見し、ひとつひとつの手技が丁寧にかつ的確に、そして患者さんへの侵襲を最小限に抑えるように緻密に計算されていることを学びました。また、解剖学や生理学で学んだ知識が臨床現場で生かされている様子を確認することができ、学びが実際の医療へとつながる実感を得ました。さらに、移植医療が県内で実施できることは、患者さんにとって大きな希望であり、今回は特に地域医療にとっても重要な一歩であると思います。医療技術の進歩だけでなく、地域における移植医療の意義についても考えることができました。
MAくん
私はもともと膵臓外科に関心があり、致死的とも言われる膵臓疾患の予後の改善に寄与できる医師になりたいと考えていました。そんな中、第一外科で膵移植をやるらしいと偶然耳にして、「これは行くしかない」と思い見学させていただきました。膵移植を見学するのは初めてで、しかも腎臓との同時移植とのことで手術室には人が多く集まり、どこかお祭りのような熱気を感じました(私だけかもしれませんが)。届いた膵臓を慎重に観察しながら、血管を丁寧に結紮し移植膵を作成していく様子は、壮大なパズルを一つひとつ組み立てていくようで、時間をかけてじっくり進められていく過程を瞬きもせず皆でじっと見つめていました。脂肪の塊にしか見えなかった部分を処理して血管が顔を出したときは、先生方の眼識に驚きました。やがて膵臓がレシピエントの動脈・静脈と吻合され、再灌流が始まると、どこからが脂肪でどこからが膵臓かもいまいちわからなかった組織に血が戻り、みるみるうちに生まれたての赤ん坊のような綺麗な桃色になっていきます。その瞬間に、これまで長い間1型糖尿病と末期腎不全に苦しまれ、糖分を摂取すれば途端に血糖値が急上昇し、週に何回も透析を受ける日々を送られた患者さんの生活が、たった今変わり始めたのだと実感し、強く胸を打たれました。同時に、膵臓と腎臓を提供されたドナーの方とそのご家族に対して、深い感謝と畏敬の念を抱かずにはいられませんでした。今回の見学を通じて、私の膵臓外科への志はさらに強まり、将来的には膵移植を含む高度な外科治療にも携わりたいと考えるようになりました。あのとき目の前で見た膵臓の再灌流の瞬間を、私はきっと一生忘れません。あの感動が、これからの道を照らしてくれると信じています。
WRくん
琉球大学病院で脳死ドナーからの膵腎同時移植手術が行われ、私は休日を利用して見学しました。小児外科を志す者として腹部手術に強い関心があり、特に実習で経験した肝胆膵領域の手術には強い印象が残っていたため、この機会を逃したくないと強く思ったからです。実際に手術を目にして最も心に残ったのは、摘出された臓器に血流が再開し、その色が一瞬で変化する場面でした。その光景は筆舌に尽くしがたい感動を呼び起こし、臓器が再び生命の営みに組み込まれていくことを目の当たりにしたとき、医療の力を改めて実感しました。また、膵臓が周囲の組織をまとったまま搬入される姿からは、移植において一刻を争う迅速さと、多くの医療者の密接な連携が不可欠であることを学びました。さらに、臓器移植はドナーやご家族の決断に加え、全国各地の人々の協力によって初めて成り立つ医療であると強く感じました。今回の経験は、自分の将来像を考える上でかけがえのない指針となると思います。
脳死臓器移植は夕方から夜中までかかる手術ですが、3名とも手術終了時まで熱心に見学していました。臓器移植にかかわらず、手術や医局の見学など随時受け付けておりますので、いつでもHP掲載のアドレスにご連絡ください。