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 私は2025年12月1日から2026年2月27日までの3か月間、大学3年次の医科学研究カリキュラムの一環として、米国オハイオ州にあるクリーブランドクリニック移植外科にて、主に肝移植と機械灌流について学ばせていただきました。
 まず、クリーブランドクリニックの概要についてご紹介いたします。同施設は、オハイオ州クリーブランドのメインキャンパスを中心に、フロリダ州やネバダ州など全米各地のみならず、ロンドンやアブダビなど世界各地にも展開している医療機関です。私が研修していたメインキャンパスは、病床数約1300床、敷地面積約69ヘクタール(琉球大学西普天間キャンパスの約3倍)と非常に広大で、複数の建物が渡り廊下でつながる複雑な構造となっており、研修開始当初は院内で道に迷うこともしばしばありました。また、Newsweek誌の世界病院ランキングで常に5位以内に入るなど、世界最高水準の医療を提供していることで知られています。さらに、独自の医学部を有し、医学教育や研究にも力を注いでいる医療機関です。
 私は高槻教授のご紹介により、クリーブランドクリニック移植外科の橋元宏治教授のもとで、肝移植手術、機械灌流、外来診療、研究室見学などを経験させていただきました。また、クリニックから車で3時間ほどのところにあるペンシルバニア州ピッツバーグまで、ドナーの臓器摘出・搬送のため2回同行したほか、小腸移植の見学も2回行う機会をいただきました。研修の中で特に印象的であったのは、脳死(DBD)および心停止(DCD)ドナーからの肝移植件数の多さです。日本では脳死肝移植が全国で年間およそ100例前後であるのに対し、クリーブランドクリニックではDBD・DCDを合わせて年間約290例の肝移植が行われています。私の研修期間中も、多いときには週に5〜6件の手術が実施されていました。このように多くの移植手術が行われる中では、ドナー肝が深夜に到着することも珍しくありません。その場合、すぐに手術を行うとレシピエントとなる患者さんだけでなく、執刀医をはじめとする医療スタッフへの負担も大きくなります。そこで、夜間に到着した肝臓は「OrganOx」という機械に接続して保存し、翌朝に移植手術を行う体制が整えられていました。私はこのOrganOxに強い関心を持ち、これを中心に研修を行いました。
 OrganOxは、ECMOと類似した構造を有し、酸素化した血液をポンプで肝臓に循環させることで、生体内に近い環境下での臓器保存を可能とする装置です。私は橋元教授およびMachine Perfusionistである南祐先生のご指導のもと、OrganOxを用いた肝臓管理や移植適応評価について学ばせていただきました。本装置は単なる保存装置ではなく、灌流中の臓器機能を評価することで移植後成績の改善にも寄与します。近年では、NRP(Normothermic regional perfusion:体温下局所灌流法)の導入により、DCDからの臓器提供数が増加していますが、一方でDCD由来臓器は移植後成績に課題が残ることもあります。そのため、提供後の肝臓をOrganOxで管理・評価することで、移植適応の判断において重要な役割を担っています。灌流中は、灌流液のpH、グルコース値、乳酸値、ヘモグロビン値などを測定し、それらが適切な範囲に保たれるように、必要に応じてグルコースや重炭酸の投与、輸血などで補正を行います。私は南先生のご指導のもとで、実際の灌流管理を3か月間にわたり学ばせていただきました。多くの症例を経験する中で、肝臓ごとに異なる反応を示す灌流管理の難しさとともに、本分野が現在も発展途上にあり、新たな評価方法に関する研究等の継続的な学習が不可欠であることを強く実感しました。このOrganOxは今後日本でも導入が進むと期待されています。移植医療の可能性を広げるこの最新技術について現地で学ぶ機会を得られたことは、私にとってかけがえのない貴重な経験となりました。
 末筆となりますが、本研修の機会を与えてくださった高槻教授、そして米国で実習のみならず日常生活に至るまで多大なるご支援をいただいた橋元教授および南先生、ならびにクリーブランドクリニック移植外科のスタッフの皆様に、心より御礼申し上げます。以上をもちまして、私の留学報告とさせていただきます。

琉球大学医学部医学科4年次 亀井 清知朗

実際に灌流中のOrganOx

Cleveland Clinicの前で

橋元宏治教授のオフィスにて

南祐先生とお寿司屋さんにて

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